D-8ビザと法人設立の関係
D-8(企業投資)ビザは、外国人が韓国で事業を運営するために必要な代表的な在留資格です。外国人投資促進法に基づき、韓国に1億ウォン以上を投資し、当該法人の経営に実質的に参加する外国人に発給されます。D-8ビザを取得すると、韓国で合法的に事業を経営できるだけでなく、ビザ更新による長期滞在が可能となり、一定の要件を満たせばF-5永住権への資格変更も可能です。
D-8ビザと法人設立は切り離せない関係にあります。D-8ビザを申請するには、まず韓国に外国人投資法人(FDI)を設立し、投資金の送金証明と事業者登録証を準備する必要があります。つまり、法人設立が先行しなければビザ申請ができない仕組みです。一部の投資家は「先にビザを取得してから法人を設立する」と考えますが、D-8ビザの場合、必ず法人設立と投資金送金が完了してからビザ申請が可能となります。
法人設立からD-8ビザ発給までの全過程は、複数の機関(銀行、裁判所、税務署、KOTRA、出入国管理事務所など)が関与するため、複雑になることがあります。しかし、各ステップを正確に理解し、体系的に準備すれば、約3〜6週間で全過程を完了することができます。本記事では、各段階の詳細な手続きと注意事項をご案内します。
法人形態の比較
外国人が韓国で事業体を設立する方法は大きく3つあります。それぞれ法的地位、要件、D-8ビザとの連携可能性が異なるため、事業の目的と規模に合った形態を選ぶことが重要です。
| 区分 | 外国人投資法人(FDI) | 支社(Branch) | 連絡事務所(Liaison) |
|---|---|---|---|
| 法的性格 | 独立法人(韓国法人) | 外国本社の国内支店 | 外国本社の連絡拠点 |
| 最低投資額 | 1億ウォン以上 | なし(本社資金で運用) | なし |
| D-8ビザ | 発給可能 | 発給可能(D-7/D-8) | 不可(D-7は可能) |
| 営業活動 | 全面的に可能 | 可能(本社名義) | 不可(非営利活動のみ) |
| 税金 | 韓国法人税(全世界所得) | 韓国源泉所得に法人税 | 所得なしのため該当なし |
| 設立難易度 | 中程度 | 高い(許認可が必要な業種あり) | 低い |
| 適している場合 | 韓国市場への本格参入、独立運営 | 本社事業の韓国展開 | 市場調査、連絡目的 |
外国人投資法人(FDI) は、D-8ビザ取得のための最も一般的な方法です。韓国法に基づいて設立された独立法人であるため、韓国国内で自由に営業活動が可能で、税金も韓国法人税法に従って納付します。ほとんどの外国人投資家がこの方式を選択しています。
支社(Branch) は外国本社の韓国支店で、本社と同一の法人格を有します。別途の投資金要件はありませんが、本社の財務状況と営業実績が設立審査に影響します。金融業、保険業など特定の業種では支社形態を取る場合が多く、D-7(駐在員)ビザまたはD-8ビザで滞在できます。
連絡事務所(Liaison Office) は、韓国で営業活動を行わず、市場調査、連絡、情報収集などの非営利活動のみを行う拠点です。別途の設立登記が不要で手続きが簡単ですが、営業活動ができず、D-8ビザの発給対象にもなりません。
設立要件の詳細
外国人投資法人(FDI)設立のための核心的な要件を詳しく見ていきます。一つでも要件を満たさなければ法人設立が不可能になったり、設立後もD-8ビザの発給が拒否される可能性があるため、しっかりと確認する必要があります。
| 要件 | 内容 | 詳細説明 |
|---|---|---|
| 最低投資額 | 1億ウォン以上 | 外国人投資促進法上の最低金額。業種によってはより高い金額が必要な場合あり |
| 出資比率 | 議決権のある株式の10%以上 | 外国人投資家が10%未満の持分では外国人投資と認められない |
| 事業場 | 実際に事業運営が可能な住所 | バーチャルオフィス、コワーキングスペースも可能だが、出入国で実査の可能性あり |
| 代表取締役 | 外国人または韓国人 | 代表取締役が外国人の場合、D-8ビザ申請が可能 |
| 事業目的 | 適法な営利事業 | 定款に記載された事業目的が韓国法に違反してはならない |
| 投資家の資格 | 外国人または外国法人 | 在外同胞(F-4)、永住権者(F-5)なども外国人投資が可能 |
投資金1億ウォンは現金投資を基準とします。現物(機械、設備、知的財産権など)による出資も可能ですが、現物出資の場合は鑑定評価が必要で、手続きが複雑になり時間もかかります。ほとんどの場合、現金送金による投資が最も効率的です。
事業場については、必ずしも独立したオフィスである必要はなく、コワーキングスペースの住所を使用することも可能です。ただし、出入国管理事務所が実際の事業運営状況を確認するための現地実査を行う場合があるため、実際に業務活動が行われているスペースでなければなりません。また、一部の業種(製造業、食品業など)には別途の施設要件がある場合があります。
代表取締役は外国人でも韓国人でも可能です。ただし、D-8ビザを申請するには、ビザ申請者が当該法人の経営に実質的に参加していなければなりません。単に持分を保有するだけで経営に参加していない場合、D-8ビザの発給が拒否される可能性があります。
投資金送金手続き
投資金の送金は、法人設立過程で最も重要なステップの一つです。送金手続きが適法でなければ、外国人投資として認められず、D-8ビザの発給が不可能になる場合があります。
ステップ1:外国人投資届出
投資金を送金する前に、まずKOTRA(大韓貿易投資振興公社)または外国為替銀行に外国人投資届出書を提出する必要があります。届出書には投資家情報、投資金額、投資対象法人の情報、事業目的などを記載します。届出が受理されると外国人投資届出済証が発行され、この届出済証の番号に基づいて銀行で投資金専用口座が開設されます。
ステップ2:外国為替銀行の口座開設と送金
外国人投資届出済証を受け取った後、国内の外国為替銀行(KB国民銀行、新韓銀行、ハナ銀行、ウリ銀行など)に投資金専用口座を開設します。この口座は一般の預金口座とは異なり、外国人投資資金の入出金を管理するための専用口座です。海外からこの口座に電信送金(T/T) で投資金を送金し、送金時には送金目的が「外国人投資金」であることを明確に表記する必要があります。
ステップ3:投資金到着確認書の発行
投資金が国内の銀行口座に入金されると、当該銀行から投資金到着確認書(外国為替買入証明書) が発行されます。この書類はD-8ビザ申請時の核心的な証拠書類であり、投資金が適法に海外から送金されたことを証明します。国内で保有していた資金や第三者から借り入れた資金は外国人投資金として認められないため、必ず海外→国内の送金経路が確認されなければなりません。
法人設立登記の詳細
投資金の送金が完了したら、管轄登記所(裁判所) に法人設立登記を申請します。法人設立登記は法人の法的存在を公式に認める手続きであり、登記が完了して初めて法人格が付与されます。
必要書類
法人設立登記に必要な主要書類は以下のとおりです。
| 書類 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 定款 | 法人の目的、商号、本店所在地、資本金、取締役構成等の基本規則 | 公証が必要 |
| 株主総会(発起人総会)議事録 | 法人設立決議、取締役選任等の記録 | 公証が必要 |
| 取締役会議事録 | 代表取締役選任等の記録 | 取締役2名以上の場合に必要 |
| 就任承諾書 | 取締役、監査役の就任同意 | 印鑑証明添付 |
| 印鑑届出書 | 法人印鑑の登録 | 裁判所の書式 |
| 株式引受証 | 各株主の株式引受内容 | 投資家ごとに作成 |
| 残高証明書 | 投資金の入金確認 | 銀行発行 |
| 外国人投資届出済証(写し) | 外国人投資届出の証拠 | KOTRA/銀行発行 |
登記手続き
定款は法人の憲法ともいうべき文書で、公証人による公証を受ける必要があります。外国人投資家の場合、投資家本人のパスポートのコピー、本国の印鑑証明(またはサイン公証)などが追加で必要です。すべての書類が準備できたら、法人本店所在地の管轄登記所に設立登記申請書を提出します。登録免許税と教育税を納付する必要があり、資本金の規模に応じて税額が変わります。
登記申請後、約3〜7日以内に登記が完了し、登記完了証と法人登記簿謄本を取得できます。法人登記簿謄本は、その後の事業者登録、外国人投資企業登録、D-8ビザ申請など、すべての後続手続きで核心的な証拠書類として使用されます。
事業者登録手続き
法人設立登記が完了したら、管轄税務署で事業者登録証を発行してもらう必要があります。事業者登録は、法人が税金を納付し、税金計算書を発行し、正常な事業活動を行うための必須手続きです。
事業者登録の申請に必要な書類は次のとおりです。事業者登録申請書、法人登記簿謄本、定款の写し、賃貸借契約書(事業場住所の証明)、代表取締役の身分証のコピー(外国人の場合はパスポートのコピー)などです。コワーキングスペースの場合は、当該コワーキングスペースとの利用契約書を提出します。
事業者登録は申請後、通常1〜3日以内に完了します。業種によって許可、登録、届出などの追加的な許認可が必要な場合(例:食品関連業種、教育関連業種など)は、当該許認可を先に取得してから事業者登録を行う必要があります。事業者登録証が発行されると、法人名義の銀行口座を正式に開設でき、本格的な営業活動が可能になります。
D-8ビザ申請の詳細
法人設立、投資金送金、事業者登録がすべて完了したら、最後に出入国管理事務所でD-8ビザを申請します。ビザ申請は、国内の出入国管理事務所(在留資格変更)または海外の在外公館(査証発給)で行えます。
必要書類
| 書類 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 査証発給(在留資格変更)申請書 | 出入国管理事務所の書式 | 写真添付 |
| パスポートのコピー | 有効期限6ヶ月以上 | 原本持参 |
| 外国人投資企業登録証 | 産業通商資源部発行 | KOTRA経由 |
| 法人登記簿謄本 | 法人設立の証拠 | 発行後3ヶ月以内 |
| 事業者登録証の写し | 税務署発行 | - |
| 投資金到着確認書 | 海外送金の証拠 | 銀行発行 |
| 事業計画書 | 事業内容、売上計画、雇用計画など | 韓国語で作成 |
| 事務所賃貸借契約書 | 事業場の実在証明 | - |
| 在職証明書または経歴証明書 | 投資家の専門性の証明 | 該当する場合 |
審査過程
D-8ビザの審査では、投資金の適法性、事業の実体性、投資家の経営参加意思などを総合的に検討します。出入国管理事務所は必要に応じて事務所の現地実査を行う場合があり、事業計画書の妥当性も審査要素に含まれます。単にビザ取得だけを目的として形式的な法人を設立した場合、ビザが拒否される可能性があります。
ビザ審査期間は約1〜4週間で、書類補完の要請がある場合は追加の時間がかかります。D-8ビザの初回在留期間は1〜2年で、事業が正常に運営されていれば更新が可能です。D-8ビザで5年以上韓国に滞在し、一定の要件(投資金の維持、韓国国民の雇用など)を満たすと、F-5永住権への資格変更も可能です。
設立後にやるべきこと
法人設立とD-8ビザの取得が完了した後も、正常な事業運営のために完了すべき行政手続きがあります。これらのステップを怠ると、過料の賦課やビザ更新の拒否などの不利益が生じる可能性があります。
外国人投資企業登録
産業通商資源部(KOTRA経由)に外国人投資企業登録を行う必要があります。この登録により、外国人投資企業として各種税制優遇や支援を受けることができます。登録後に発行される外国人投資企業登録証は、D-8ビザ申請の必須書類でもあります。
4大保険への加入
従業員を雇用する場合、国民健康保険、国民年金、雇用保険、産業災害補償保険の4大保険に加入する必要があります。法人設立後、従業員の採用時点に合わせて管轄機関に加入届出を行います。外国人の代表取締役本人も健康保険と国民年金に加入する必要があり、滞在期間によって加入義務が異なる場合があります。
法人口座の正式開設
事業者登録証を受け取った後、法人名義の正式な銀行口座を開設します。投資金専用口座とは別に、日常的な営業資金の入出金のための口座です。法人口座の開設時には、事業者登録証、法人登記簿謄本、代表取締役の身分証などが必要です。
税務記帳と申告の準備
韓国で法人を運営すると、付加価値税(四半期ごとの申告)、法人税(年次申告)、源泉税(給与支給時)など、さまざまな税金申告義務が発生します。税理士または会計士に記帳(帳簿記録)と税金申告を委託するのが一般的であり、事業初期から税務専門家と協力することが長期的にコスト削減につながります。
外国人登録と住所届出
D-8ビザで韓国に入国した後、90日以内に外国人登録を行う必要があります。管轄の出入国管理事務所で外国人登録証の発行を受け、この登録証が韓国での身分証の役割を果たします。居住地を変更した場合は、14日以内に変更届出を行う必要があります。
費用のご案内
法人設立からD-8ビザ取得までの予想費用を項目別に整理しました。実際の費用は法人の形態、資本金の規模、事業場の場所などによって異なる場合があります。
| 費用項目 | 予想金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 投資金 | 1億ウォン以上 | 法人の資本金として使用、事業運営に活用 |
| 公証費用 | 約30万〜80万ウォン | 定款、議事録の公証 |
| 登録免許税 + 教育税 | 約40万〜120万ウォン | 資本金の規模により異なる |
| 司法書士手数料 | 約50万〜100万ウォン | 法人設立登記の代行 |
| 事務所賃貸保証金/家賃 | 別途算定 | 地域、規模により大きく異なる |
| 行政士/コンサルティング手数料 | 約100万〜300万ウォン | 全過程の代行時 |
| D-8ビザ手数料 | 約13万ウォン | 在留資格変更基準 |
| 税理士記帳料(月額) | 約10万〜30万ウォン | 毎月発生する固定費用 |
| 印鑑作製費 | 約3万〜5万ウォン | 法人印鑑、使用印鑑 |
投資金1億ウォンは法人の資本金として事業運営に使用されるお金であるため、純粋に「費用」として消費されるものではありません。ただし、投資金以外に法人設立関連の付帯費用として約200万〜500万ウォン程度がかかると見込まれます。これに事務所の賃貸費用を加えると、初期の定着費用がかなりの金額になる可能性があるため、十分な資金計画を立てることが重要です。
所要期間
全過程の所要期間は書類の準備状況と関連機関の処理速度によって異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。
| 段階 | 所要期間 | 備考 |
|---|---|---|
| 外国人投資届出 | 1〜3日 | KOTRAまたは銀行 |
| 投資金送金と到着確認 | 3〜7日 | 海外送金所要時間を含む |
| 法人設立登記 | 3〜7日 | 書類完備基準 |
| 事業者登録 | 1〜3日 | 税務署処理 |
| 外国人投資企業登録 | 3〜5日 | KOTRA経由 |
| D-8ビザ申請と発給 | 7〜30日 | 審査の難易度により異なる |
| 合計 | 約3〜6週間 | 書類準備期間は別途 |
上記の期間はすべての書類が完備された状態での所要期間です。書類の準備にはさらに1〜2週間がかかる場合があり、特に海外で発行を受ける書類(本国の犯罪経歴証明書、印鑑証明など)がある場合はさらに長くかかることがあります。全体として、準備を開始した時点からD-8ビザを受け取る時点まで、約1〜2ヶ月を見込むのが現実的です。
専門の行政士や司法書士に全過程を委任すれば、各段階の待ち時間を最小限に抑え、同時進行可能な手続きを並行処理することで、全体の所要期間を短縮できます。
よくある質問(FAQ)
Q1:法人設立からD-8ビザ発給まで合計でどのくらいかかりますか?
書類が完備された状態で約3〜6週間かかります。書類準備期間を含めると1〜2ヶ月程度を見込むのがよいでしょう。専門家に代行を依頼すれば、各段階の並行処理により時間を短縮できます。
Q2:事務所は必ず必要ですか?自宅で登録できますか?
実際に事業運営が可能な事務所の住所が必要です。自宅を事業場として登録できる業種もありますが、D-8ビザの審査では事業の実体を重要視するため、独立した事務所やコワーキングスペースを利用することをお勧めします。出入国管理事務所が現地実査を行う場合があるため、実際に業務活動が行われているスペースでなければなりません。
Q3:D-8ビザで家族を招待できますか?
はい、D-8ビザ所持者は配偶者と未成年の子女をF-3(同伴)ビザで招待できます。家族招待の際は、家族関係証明書類(婚姻証明書、出生証明書など)にアポスティーユまたは領事認証を受けて提出する必要があります。F-3ビザの滞在期間はD-8ビザ所持者の滞在期間を超えることはできません。
Q4:投資金1億ウォンは事業に使用してもよいですか?
はい、投資金は法人の資本金であるため、事業目的に合わせて自由に使用できます。事務所の賃貸料、従業員の給与、材料の購入、マーケティング費用など、正当な事業経費として支出できます。ただし、設立直後に投資金を個人用途で全額引き出すと、事業の実体がないものと判断される可能性があるためご注意ください。
Q5:D-8ビザからF-5永住権に変更できますか?
可能です。D-8ビザで5年以上韓国に滞在し、投資状態を維持して韓国国民を雇用するなどの一定要件を満たせば、F-5永住権への資格変更を申請できます。F-5永住権を取得すれば、滞在期間の制限なく韓国で自由に居住し、経済活動を行うことができます。
Q6:1人法人でもD-8ビザの対象になりますか?
はい、株主が1名の1人法人(1人株式会社)も外国人投資法人として認められ、D-8ビザの申請が可能です。ただし、代表取締役(投資家)が実質的に事業を経営していなければならず、事業の実体が確認される必要があります。
Q7:韓国に既に設立されている法人に投資してもD-8ビザを取得できますか?
可能です。既存の韓国法人の株式を10%以上(1億ウォン以上)取得する方法で外国人投資を行うことができ、この場合もD-8ビザの申請が可能です。既存法人への投資には株式取得方式と有償増資への参加方式があり、それぞれ手続きが異なるため、専門家にご相談ください。
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