外国人法人の就業規則作成と届出、実務で最もつまずくポイント
外国人法人であっても、常時使用する労働者が10人以上であれば、就業規則を作成し、所轄の雇用労働支庁に届け出る必要があります。 対象は、韓国に設立された外国人投資企業、外国法人の支店・連絡事務所のうち、常時10人以上を雇用する事業場です。 本記事では、届出義務の判断、必須記載事項、本社の英文ポリシーとの衝突への対応、労働者の意見聴取・同意手続き、実際の提出書類、そしてよく指摘される補正事項までを扱います。
外国人法人の就業規則、誰がいつ届け出るべきか
勤労基準法第93条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に対し、就業規則の作成・届出義務を課しています。 外国人法人であっても、韓国国内で労働者を雇用すれば、韓国の労働法がそのまま適用されます。 本社が米国・日本・中国のいずれにあろうとも、韓国事業場単位で判断されます。
「常時10人」の本当の意味
常時労働者数は、登記上の役員ではなく、実際に労務を提供している者を基準にカウントします。 正社員、契約社員、パートタイム、外国人労働者(E-7、D-8本人を除く従業員、F-2/F-5など)がすべて含まれます。 日雇い労働者や短時間労働者も、1か月の算定期間中に毎日使用した人員の平均で計算します。
実務ではこの段階でつまずくことが多いです。 代表取締役1名、登記役員2名、従業員8名であっても、登記役員が実際の労働契約に基づき賃金を受け取って業務に従事していれば労働者として含まれ、合計11人となります。 逆に、本社派遣の駐在員が韓国法人と労働契約を結ばず本社給与のみを受給している場合は、算定から除外されるケースが多くなります。
届出時期は作成後ただちに
10人に達した日から合理的な期間内に届け出るべきとされ、通常は1か月以内の提出が推奨されます。 届出を先延ばしにしたまま労働庁の定期点検や陳情事案が入ると、過料賦課へと直結します。 正確な賦課基準は事案ごとに異なるため、所轄の雇用労働部支庁での確認が必要です。
外国人法人がよく見落とす必須記載事項
勤労基準法第93条は、12の必須記載事項を定めています。 一つでも欠落すると、届出自体が差し戻されるか、補正要求が出されます。
12の必須記載事項まとめ表
| 区分 | 項目 | 外国人法人がよく見落とすポイント |
|---|---|---|
| 1 | 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇 | 本社のタイムゾーンを基準に記載し、韓国勤労基準法に違反 |
| 2 | 賃金の決定・計算・支給方法 | 外貨支給、本社ボーナスを韓国の賃金から漏らす |
| 3 | 家族手当の計算・支給方法 | 本社のグローバルポリシーと韓国基準の不一致 |
| 4 | 退職に関する事項 | 退職金/DC・DBの選択漏れ |
| 5 | 退職金、賞与および最低賃金 | グローバル本社のポリシーで代替しようとする |
| 6 | 食費、作業用品の負担 | 明記漏れ |
| 7 | 労働者の教育 | 本社のグローバル研修のみを記載 |
| 8 | 出産前後休暇・育児休業など母性保護 | 韓国の法定基準の漏れ |
| 9 | 安全・保健 | 本社EHSポリシーをそのまま流用 |
| 10 | 業務上・業務外の災害扶助 | 労災保険以外の追加扶助の明記漏れ |
| 11 | 表彰と制裁 | 懲戒の種類・事由・手続きが曖昧 |
| 12 | その他、事業場の労働者全体に適用される事項 | 秘密保持、競業避止、発明帰属など |
本社英文Employee Handbookをそのまま翻訳してはいけない理由
本社から受け取ったEmployee Handbookを単純翻訳して提出するケースが、最も多く差し戻されます。 米国式のAt-will employment、無制限PTO、Sick leaveポリシーは、韓国勤労基準法と衝突します。 年次有給休暇は、勤続1年未満は毎月1日、1年以上は15日が法定最低基準であり、本社ポリシーがより有利であれば本社基準を適用し、不利であれば韓国基準が優先されます。
注意: 本社ポリシーに韓国勤労基準法より不利な条項が一つでもあると、その部分だけが無効になるのではなく、就業規則全体の信頼性が損なわれます。最初から韓国基準の上に本社ポリシーを重ねる形で設計する必要があります。
労働者の意見聴取と不利益変更時の同意手続き
ここで差がつきます。 同じ就業規則であっても、どのような手続きを踏んだかによって効力そのものが揺らぎます。
意見聴取と同意の区別
新規作成、または労働者にとって有利な変更であれば、意見聴取のみで足ります。 労働者に不利益な変更については、労働者の過半数の同意を得る必要があります。 過半数労働組合がある場合は組合の同意、ない場合は労働者過半数の同意が基準となります。
「飲み会の席で全員同意しました」は通用しない
実務上、最も脆弱なのが、まさにこの同意手続きの立証部分です。 書面の同意書、議事録、投票結果などの客観的資料がなければ、後日の紛争であっさり覆されます。 外国人役員が韓国語が分からないという理由で、英文の一斉メール送信1回で済ませているケースは、労働庁の点検でほぼ100%補正要求が入ります。
むしろ、外国人従業員が多数を占める事業場では、韓国語・英語(または中国語/日本語)を併記したものを作成し、各自から署名を得る方式が安全です。 具体的な同意書フォームや手続きの設計は事業場の構成によって異なるため、相談時に事例に合わせてご案内いたします。
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届出手続きと提出書類
所轄の地方雇用労働(支)庁に直接訪問するか、雇用労働部民願窓口を通じてオンラインで届け出ることができます。
提出書類チェックリスト
- 就業規則届出書(所定様式)
- 就業規則本文(韓国語、外国語併記時は別途添付可)
- 労働者過半数の意見聴取書または同意書
- 事業者登録証の写し
- (変更届出の場合)変更前後の比較表
実際の処理フロー
届出自体は受理行政ですが、労働庁の勤労監督官が形式審査を経て補正要求を出すケースが多くあります。 通常、受付から1〜2週間以内に補正通知が届き、補正要請を無視すると未届出と見なされ過料の対象となります。 処理期間は支庁ごとに異なり、特に外国人投資企業が集中するソウル・京畿支庁では補正サイクルが長引くことがあります。
届出後の社内掲示義務
届出で終わりではありません。 勤労基準法第14条に基づき、就業規則は事業場内に常時掲示するか備え付けて、労働者が自由に閲覧できるようにしなければなりません。 英語圏の従業員がいる場合は、英文版も併せて備え付けることが、紛争予防に最も直接的な効果があります。

外国人法人特有の論点 — 本社ポリシーとの整合性
本社がグローバル統一ポリシーを強く要求する場合、韓国事業場だけ別のルールを適用するのは難しいという反発がよく出ます。 実務では、「本社ポリシーに従うが、韓国の強行法規を下回らない」という但書条項を設ける方式で対応します。
よく問題となる衝突項目
| 本社ポリシー | 韓国法との衝突ポイント | 実務上の対応方針 |
|---|---|---|
| At-will解雇 | 正当な理由のない解雇の禁止(勤基法§23) | 韓国基準を優先する旨を明示 |
| 無制限PTO | 年次有給休暇の算定・手当支給 | 法定年休を別途運用 |
| グローバルボーナスポリシー | 通常賃金への算入可否の論争 | 算入範囲を明示 |
| 本社の秘密保持・競業避止 | 韓国判例上の合理性審査 | 期間・地域・補償を明示 |
| グローバル懲戒手続き | 弁明機会の保障 | 韓国式の懲戒委員会手続きを追加 |
通常賃金・平均賃金の定義が最も弱い
この部分が弱いと、後日、退職金や延長勤労手当の紛争で全部やり直して計算しなければならない状況になります。 グローバルボーナス、RSU、サイニングボーナス、駐在員手当などを通常賃金に含めるかどうかを就業規則で明確に定義していなければ、紛争で会社が不利になります。 具体的な算定方式は賃金構成や職群によって異なるため、事例ごとの検討が必要です。
実務のヒント: 本社HRから送られてきた英文Compensation Policyをそのまま貼り付けるのではなく、韓国基準の賃金項目表を先に作成したうえで本社項目をマッピングする順序で作成すれば、通常賃金紛争の可能性が大幅に減ります。
よく発生する補正要求と過料
勤労監督官が補正を要求するパターンは、ほぼ決まっています。 まず確認すべきは、意見聴取手続きの立証と必須記載事項の漏れの有無です。
補正要求の常連項目
- 意見聴取書/同意書の未添付、または形式不備
- 始業・終業時刻が本社基準(例: 9 AM PST)で記載されている
- 年次休暇の算定が会計年度基準か入社日基準か不明確
- 賃金支給日・支給方法の漏れ
- 懲戒事由と手続きの曖昧さ
- 母性保護(出産休暇・育児休業)条項の漏れ
未届出・未掲示の過料
勤労基準法第116条により、就業規則の届出義務違反、変更届出義務違反、掲示義務違反は過料賦課の対象となります。 具体的な賦課金額は違反回数や事業場規模によって異なるため、国家法令情報センターの勤労基準法条文での確認が必要です。 費用は事例ごとに異なりますので、無料相談にて正確にご案内いたします。
FAQ
Q1. 常時労働者が9人ですが、それでも就業規則を作成する必要がありますか? 届出義務はありません。 ただし、紛争予防や採用・評価基準の明確化のため、作成をお勧めします。 後に10人に達した時点で慌てて作成すると、本社ポリシーの検討もないまま拙速に提出することになります。
Q2. 本社のEmployee Handbookの英文版だけを備え付けておけば、届出義務は免除されますか? 免除されません。 韓国事業場単位で、韓国語の就業規則を別途作成・届出する必要があります。 英文版は外国人従業員向けの案内として併記することは可能ですが、効力の基準となるのは韓国語版です。
Q3. 従業員が全員外国人ですが、韓国語の就業規則の同意手続きに意味はありますか? 韓国労働法上は韓国語本文が基準となりますが、外国人従業員が理解できるよう英語などの翻訳版を併せて提供したうえで同意を得ることが、紛争予防に最も安全です。 翻訳版と韓国語版の間に解釈の衝突が生じた場合は、韓国語版が優先されます。
Q4. 就業規則を変更するたびに、毎回再度届け出る必要がありますか? はい、変更時にも届出義務があります。 労働者に不利益な変更であれば、過半数の同意もあわせて得る必要があります。 有利な変更であっても、意見聴取は経なければなりません。
Q5. 派遣駐在員(Expatriate)は就業規則の適用対象ですか? 本社との労働契約を維持し、韓国法人とは別途契約がない純粋な派遣の場合は、適用対象から外れる可能性があります。 しかし、韓国法人が賃金の一部でも支給したり、指揮命令を行ったりする場合は、韓国法人の労働者と見なされ、就業規則が適用される可能性が高くなります。 駐在員の身分やビザ(D-7/D-8/E-7)によって判断が分かれます。
Q6. 労働組合がない場合、過半数の同意はどのように得るのですか? 労働者の過半数が参加する会議、または書面同意の方式が一般的です。 使用者が介入しない自律的な手続きでなければならず、同意書・議事録・署名簿などの客観的な立証を残す必要があります。 この部分の設計が弱いと、後日の紛争でそのまま崩れます。
専門家による相談が必要ですか?
外国人法人の就業規則は、単なる様式の穴埋めではなく、本社のグローバルポリシー、韓国の強行法規、外国人従業員の構成をすべて踏まえた設計作業です。 書類を提出すれば終わりではなく、意見聴取・同意手続きの立証設計のほうがむしろ重要です。
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