外国法人の労働基準法適用範囲、実務で真っ先に確認すべき基準
韓国に設立された外国法人であっても、韓国人労働者を1人でも雇用すれば労働基準法がそのまま適用されます。
本社の国籍とは関係なく、勤務地が韓国であれば、親会社の国籍がアメリカであれ日本であれ中国であれ、同一の規制を受けます。
本記事では、外国法人が韓国で人材を採用する際に最初に直面する労働基準法の適用範囲、常時5人基準、外国人労働者への適用可否、本社派遣人員の取り扱いまで、実務的な観点から整理しました。
外国法人の労働基準法適用範囲における基本原則
まずは属地主義です
韓国の労働基準法は属地主義を採用しています。
労務提供の場所が韓国であれば、使用者が外国法人であろうと外国人個人であろうと、労働基準法が適用されます。
本社が東京にあり子会社がソウルにあっても、ソウル事務所で勤務する労働者には韓国法が適用されます。
実務では、外国本社の人事規程をそのまま持ち込んで韓国人従業員に適用しようとして躓くケースが最も多いです。
年次有給休暇、退職金、解雇規定は、外国本社の規程ではなく韓国労働基準法が優先されます。
法人形態を問わず適用されます
株式会社、有限会社、外国企業の韓国支店、連絡事務所のいずれも、韓国で労働者を雇用する場合は適用対象となります。
法人登記がなくても、事実上事業を運営していれば使用者とみなされます。
連絡事務所(Liaison Office)は営業活動はできませんが、従業員の雇用は可能であり、この場合も労働基準法はそのまま適用されます。
詳しい条文については、国家法令情報センターの労働基準法の原文を直接ご確認いただくことをおすすめします。
常時労働者5人が分ける決定的な違い
5人未満と5人以上の義務範囲
労働基準法は全条文が一律に適用されるわけではありません。
常時労働者数に応じて適用条項が変わりますが、実務で最も見落とされやすいのが、この5人基準です。
| 区分 | 5人未満事業場 | 5人以上事業場 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 労働契約書の作成 | 適用 | 適用 | 全事業場の義務 |
| 最低賃金 | 適用 | 適用 | 外国人含む |
| 週休手当 | 適用 | 適用 | 週15時間以上 |
| 退職金 | 適用 | 適用 | 1年以上勤続時 |
| 年次有給休暇 | 非適用 | 適用 | 5人以上から |
| 時間外・深夜・休日割増手当 | 非適用 | 適用 | 通常賃金の50%加算 |
| 不当解雇救済申請 | 非適用 | 適用 | 労働委員会救済 |
| 休業手当 | 非適用 | 適用 | 平均賃金の70%以上 |
まず確認すべきは、自社の常時労働者数が正確に何人になるかという算定方法です。
単に登録された人員数ではなく、1か月間に使用した延べ人員を稼働日数で割った値が基準となります。
派遣労働者、短時間労働者、外国人労働者すべてを含めて算定します。
5人算定で混乱しやすいポイント
代表取締役は通常、算定から除外されます。
ただし登記役員であっても、実質が労働者に近ければ含まれる可能性があり、判断が分かれます。
本社から派遣されてきた外国人役員が名目上は取締役であっても、実際には韓国法人の業務を日常的に遂行している場合、労働者性が認められて5人にカウントされることもあります。
この点は、登記簿と実際の業務形態が異なる場合に特に争点となります。
注意: 5人基準の算定は単純な頭数ではありません。本社派遣人員の処理、役員の労働者性判断によって結果が大きく変わるため、実際の人員構成表をもとに精査する必要があります。
外国人労働者にも同様に適用されるのか
国籍ではなく勤務地が基準です
外国人労働者であっても、韓国で勤務すれば韓国人と同等に労働基準法の保護を受けます。
E-7、E-9、D-7、D-8、F-2、F-5など、ビザの種類は問いません。
さらには、未登録外国人であっても、すでに労務提供を行った部分については、賃金、退職金、労災補償を請求することができます。
実務では、外国人従業員が英語の契約書のみを受け取り韓国語の契約書を受け取れず、紛争に発展するケースが頻繁にあります。
労働契約書は外国人が理解できる言語で交付するのが原則であり、英語・中国語・日本語など母国語版をあわせて提供するのが安全です。
E-9ビザ労働者の特殊性
非専門就労(E-9)で入国した外国人労働者は、一般的な労働基準法に加えて、外国人労働者の雇用等に関する法律(雇用許可制法)も併せて適用されます。
事業場変更の制限、標準労働契約書の使用義務、出国満期保険への加入など、追加の義務が課せられます。
E-7専門人材にはこのような特殊規定はなく、一般的な労働基準法のみが適用されます。
E-9の採用を計画している場合は、雇用労働部の外国人雇用管理システムで最新の手続きをご確認ください。
本社派遣社員への労働基準法の適用
派遣か転出かの区別から始まります
本社から韓国法人に派遣された社員の取り扱いは、その形態によって異なります。
指揮命令権と賃金支給主体が本社にあるのか韓国法人にあるのかによって、使用者が誰になるかが変わります。
| 区分 | 賃金支給 | 指揮命令 | 韓国労働基準法の適用 |
|---|---|---|---|
| 出張 | 本社 | 本社 | 原則として非適用(短期) |
| 派遣 | 本社または韓国法人 | 韓国法人 | 適用 |
| 転出 | 韓国法人 | 韓国法人 | 全面適用 |
| 二重雇用 | 両方 | 両方 | 韓国業務分が適用 |
特に、本社の給与を本国の口座でそのまま受け取りながら韓国で勤務する役員の場合、形式と実態が乖離し、税務・労務の両面で問題が生じます。
二重契約構造のリスク
本社との契約を維持したまま、韓国法人とも別途労働契約を締結する二重構造はよく用いられます。
しかし、退職金の算定、年次有給休暇の計算、4大保険の加入範囲をどこまでとするかをめぐって紛争が起きやすくなります。
本社での勤続期間を韓国の退職金算定に含めるか否かは、契約書の文言一行で結論が分かれます。
正確な費用や手続きについては、専門家への相談を通じてご確認ください。
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就業規則・労働契約書の作成義務
10人以上であれば就業規則の届出義務
常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成して雇用労働部に届け出る必要があります。
外国法人が本社の人事規程を韓国語に翻訳してそのまま提出すると、韓国労働基準法と抵触する条項のために差し戻されるケースが少なくありません。
解雇事由、懲戒手続き、年次有給休暇の付与方式、退職金の算定基準は、韓国法を基準に作り直す必要があります。
労働契約書の必須記載事項
労働契約書は、5人未満の事業場であっても作成・交付義務があります。
未作成・未交付の場合、事業主に過料が課され、外国人従業員には母国語の翻訳版もあわせて提供する必要があります。
- 賃金の構成項目、計算方法、支給方法
- 所定労働時間
- 休日
- 年次有給休暇
- 就業場所と従事業務
この5項目は書面明示義務項目であり、漏れがあれば別途処罰の対象となります。
実務上のヒント: 外国本社のフォーマットを英文のまま使用し、韓国語版を別途作成していない会社が多くあります。紛争が発生した際、韓国語版がないことが事業主にとって不利に働きます。
賃金・退職金・4大保険の適用
賃金支給の原則
賃金は通貨で、直接、全額、毎月1回以上、定期的に支給しなければなりません。
本社が外貨で本国の口座に振り込む方式は、直接・通貨支給の原則に抵触するおそれがあります。
韓国法人名義でウォン建ての口座に振り込む構造が原則となります。
最近、外資系スタートアップで本社送金方式により給与を処理した結果、賃金未払いの申告につながった事例が増えており、給与構造の設計段階からのチェックが必要です。
退職金と退職年金
1年以上勤続した労働者には、退職金の支給義務が発生します。
2022年以降の新設事業場は退職年金の加入が義務化されており、外国法人も同様です。
| 項目 | 内容 | 適用時期 |
|---|---|---|
| 退職金 | 1年以上勤続時に発生 | 入社日基準 |
| 退職年金の加入義務 | 新設事業場 | 設立から1年以内 |
| 出国満期保険 | E-9外国人労働者 | 入国後80日以内 |
| 4大保険 | 外国人含め加入義務 | 入社日 |
4大保険のうち雇用保険は、外国人のビザ種類に応じて義務加入か任意加入かが分かれます。
詳しい適用基準は、国民年金公団と勤労福祉公団でビザ別の案内をご確認ください。
費用はケースにより異なるため、無料相談の際に正確にご案内いたします。
労働法違反時に外国法人が受ける制裁
刑事処罰と過料が同時に
賃金未払い、労働契約書の未作成、不当解雇などには事業主に対する刑事処罰が伴います。
外国人代表取締役も例外ではなく、出国時に制限がかかる可能性があります。
特に賃金未払い事件は、和解に至らなければ代表者個人が刑事処罰の対象となり、ビザの延長・変更審査にも直接影響を及ぼします。
ビザに与える影響が最も大きい
D-7、D-8ビザを保有する外国人代表が、賃金未払いなど労働法違反の履歴を持つ場合、ビザ延長審査で不利益を被ります。
ハイコリアのビザ延長審査では、事業場の4大保険加入状況、賃金未払いの履歴が直接照会されます。
ここが弱いと、事業自体は正常であっても在留資格そのものが揺らぐことになります。
よくあるご質問 (FAQ)
Q1. 外国法人が韓国人従業員を1人だけ雇用しても労働基準法は適用されますか?
はい、適用されます。
常時労働者数に関わらず、労働契約書の作成、最低賃金、週休手当、退職金は1人事業場から適用されます。
5人以上になると、年次有給休暇、割増手当、不当解雇救済などが追加されます。
Q2. 本社から派遣されてきた外国人役員も労働基準法の保護を受けますか?
実質が労働者であれば保護されます。
登記役員であっても、代表取締役の指揮を受け、定められた業務を遂行していれば労働者性が認められる可能性があります。
判断は契約書の文言ではなく、実際の業務遂行のあり方によって分かれます。
Q3. 英文の労働契約書のみを作成しても問題ないでしょうか?
労働契約書自体は有効となり得ますが、外国人労働者には母国語または理解可能な言語で交付する必要があります。
韓国人従業員には韓国語版の交付が原則であり、英文のみを交付すると未交付とみなされ、過料の対象となります。
Q4. E-9とE-7労働者では労働基準法の適用が異なりますか?
労働基準法自体は同様に適用されます。
ただしE-9については雇用許可制法が追加で適用され、標準労働契約書、事業場変更の制限、出国満期保険など別途の義務があります。
E-7にはこのような特殊規定はありません。
Q5. 本社が外貨で本国の口座に給与を振り込むと、どのような問題が生じますか?
賃金の直接・通貨支給原則に抵触するおそれがあり、韓国では賃金未払いとして申告される可能性があります。
また、源泉徴収漏れにより税務上の加算税が発生し、4大保険の賦課基準賃金から漏れて後日追徴される場合もあります。
韓国法人の口座からウォン建てで支給する構造が原則です。
Q6. 外国法人の代表者が賃金未払いで通報された場合、ビザにどのような影響がありますか?
D-7、D-8ビザの延長・変更審査で不利益を受けます。
未払い額が大きい、あるいは和解に至らない場合は出国停止がかかる可能性があり、刑事処罰の履歴が残れば、今後F-2、F-5への変更時にも影響を及ぼします。
事業場の4大保険加入状況とともに、真っ先に照会される項目です。
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外国法人における労働基準法の適用は、本社の人事規程と韓国法が衝突する箇所が多く、設立初期から労務構造を整理しておかないと、ビザ延長の段階で問題が顕在化します。
ビジョン行政士事務所では、外国法人の設立から労務管理、ビザ延長まで一括して対応いたします。
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- 外国法人の設立および外国人投資企業の登録
- 外国人役員・従業員の労働契約書・就業規則の作成およびレビュー
- E-7、D-7、D-8ビザの申請・延長・変更
- 賃金未払い、不当解雇への対応コンサルティング
- 4大保険の加入および外国人雇用申告
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