外国法人の解雇手続と不当解雇 - 外資系企業の使用者がまず押さえるべき実務の核心
外資系法人が韓国人従業員を解雇する際につまずくのは、理由ではなく手続です。
労働基準法は常時5人以上の事業場であれば、外国資本・外国代表であっても同様に適用され、本社規定が韓国法より優先することはできません。
本記事では、外国法人が韓国で従業員を解雇する際に必ず経るべき手続、不当解雇として覆される実務上のポイント、労働委員会への救済申請への対応まで、核心だけを整理します。
外国法人の解雇手続と不当解雇、韓国法が本社規定より優先
外資系企業の使用者が最も陥りやすい落とし穴は、「本社マニュアル通りに進めたから問題ない」という判断です。
実務では、本社のHRポリシーと韓国労働基準法が衝突した瞬間、韓国法が優先します。
まずは韓国法の適用範囲から
外国人投資法人、外国会社の韓国支店、連絡事務所のいずれであっても、韓国国内で労働者を雇用する以上、労働基準法の適用を受けます。
本社所在地が米国・日本・中国のいずれであっても、韓国で働く従業員の解雇は韓国法に基づき判断されます。
特に常時労働者5人以上の事業場は不当解雇救済申請の対象となるため、使用者が解雇理由を立証できなければ、原職復帰命令が下される可能性があります。
本社ポリシーと韓国法が衝突する場合
本社が「PIP(業績改善プログラム)30日後に解雇可能」と定めていても、韓国ではそれだけでは正当な解雇理由とは認められません。
むしろPIPの運用自体が形式的だった場合、その記録が不当解雇の証拠として扱われるケースが多々あります。
核心はここです。本社の手続は韓国法上の手続の一部にすぎず、韓国独自の書面通知・弁明機会付与・就業規則上の手続をすべて踏む必要があるという点です。
正当な解雇理由 - 実務で認められる範囲
労働基準法第23条は「正当な理由なく解雇してはならない」とのみ規定しています。
問題はここから始まります。「正当な理由」の基準が条文ではなく、判例と労働委員会の判定例に散在しているという点です。
通常解雇と懲戒解雇の区分
| 区分 | 通常解雇 | 懲戒解雇 |
|---|---|---|
| 理由 | 労働者の一身上・一般的事由 | 労働者の帰責事由 |
| 例 | 業務能力不足、健康悪化、部署廃止 | 横領、無断欠勤、暴言、営業秘密漏洩 |
| 手続 | 書面通知 + 30日前予告 | 就業規則上の懲戒委員会手続 |
| 立証責任 | 使用者 | 使用者 |
懲戒解雇を通常解雇のように処理すれば手続違反となり、通常解雇を懲戒解雇として押し進めれば理由不十分となります。
実務では、この区分が曖昧なまま進められ、労働委員会で覆される事例が最も多く見られます。
経営上の解雇は別途の要件
リストラ、事業縮小、外国本社による韓国撤退決定に伴う解雇は、労働基準法第24条「経営上の理由による解雇」に該当します。
この場合、①緊迫した経営上の必要性、②解雇回避の努力、③合理的・公正な解雇基準、④50日前の労働者代表との協議という4つの要件をすべて満たす必要があります。
特に外国本社が一方的に韓国支店の撤退を通告する場合、「解雇回避の努力」の立証が最も弱いポイントとなります。
本社の事情によって要件充足の可否が分かれるため、自社の状況に即した正当性検討は事前の相談が不可欠です。
解雇手続 - 一行でも欠ければ不当解雇
理由がどれほど明白でも、手続が抜けていれば不当解雇と判定されます。
実務では、理由を巡る争いよりも手続の不備により使用者が敗れるケースの方が多いほどです。
書面通知が最初につまずくポイント
労働基準法第27条は、解雇事由と解雇時期を書面で通知しなければならないと明示しています。
| 方式 | 効力 | 備考 |
|---|---|---|
| 書面(紙)通知 | 有効 | 最も安全 |
| メール通知 | 条件付き有効 | 本人受信確認必要 |
| カカオトーク・SMS | 争いの余地大 | 単独では危険 |
| 口頭通知 | 無効 | 手続違反が即確定 |
特に外資系企業では「Termination Letterを英文のみで送付した」というケースが多く見られますが、韓国人労働者が理解可能な韓国語併記、または韓国語通知が安全です。
解雇事由は「業績不振」「勤務不誠実」のような抽象的表現ではなく、いつ・どのような行為が・どの規定に違反したのかを具体的に記載する必要があります。
30日前の解雇予告または30日分の通常賃金
労働基準法第26条により、使用者は解雇の30日前に予告を行うか、30日分以上の通常賃金を支給しなければなりません。
これを「解雇予告手当」と呼び、解雇が正当であるか不当であるかに関わらず、別途に支給義務が発生します。
予告手当を支給したからといって解雇が正当化されるわけではない、というのが外資系企業の使用者がよく誤解するポイントです。
就業規則・労働契約上の懲戒手続
常時10人以上の事業場は、雇用労働部に届け出た就業規則を備えていなければならず、懲戒委員会の構成・弁明機会付与の手続がその中で定められています。
就業規則に「懲戒委員会開催の7日前に通知、弁明書提出機会を付与」とあれば、これを一段階でも省けば手続違反です。
本社マニュアルには存在しない韓国独自の手続であるため、外国人代表が直接進める場合に最も多く抜け落ちます。
注意: 理由が正当でも弁明機会を与えなければ不当解雇として確定します。労働委員会の判定例で最も頻出するパターンです。
正確な手続と費用は事前相談でご確認ください
解雇1件が不当解雇として覆されると、賃金の遡及支給、原職復帰、評判の損傷まで連鎖的に発生します。
費用は事例ごとに異なるため、無料相談時に正確にご案内いたします。
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不当解雇救済申請 - 労働委員会対応の実務
解雇された労働者は、解雇日から3か月以内に管轄の地方労働委員会へ不当解雇救済申請を行うことができます。
使用者の立場では、この3か月が最も緊張する期間です。
労働委員会手続の流れ
| 段階 | 内容 | 所要 |
|---|---|---|
| 救済申請の受付 | 労働者が申請書を提出 | 解雇日から3か月以内 |
| 調査段階 | 調査官が双方の資料・陳述を確保 | 約30~60日 |
| 審問会議 | 公益委員・労働者委員・使用者委員による審理 | 1~2回 |
| 判定 | 不当解雇認定 / 棄却 | 申請日から約60日前後 |
| 再審・行政訴訟 | 中央労働委員会再審、行政裁判所訴訟 | 追加で数か月 |
審問会議1回で決着がつくケースがほとんどであるため、事前の答弁書・証拠整理が結果を左右します。
使用者が最も多く見落とす立証資料
勤怠記録、業務指示メール、警告状、PIP評価表、同僚の陳述書などが核心的な証拠です。
問題は、解雇の時点になってようやく資料を集め始めるという点です。
普段から記録を残しておらず、解雇理由を口頭でのみ扱ってきたのであれば、審問会議で立証に使える資料はほとんど残っていません。
この部分が弱いと、実際に理由があっても不当解雇と判定される可能性が高くなります。
不当解雇と判定された場合の使用者の負担
不当解雇と判定されると、①原職復帰命令、②解雇期間中の賃金相当額の支給、③不履行時の履行強制金が課されます。
労働者が原職復帰を望まない場合は金銭補償命令に代えることができますが、その金額は賃金相当額以上で定められます。
最近の類似事例では、本社が韓国法を軽視した結果、賃金の遡及支給額が累積し、負担が大きくなったケースもありました。

外国人労働者(E-7、D-8など)の解雇時に追加で問題となる点
外国人従業員を解雇する際には、ビザの問題まで併せて検討する必要があります。
労働契約の終了が、そのまま在留資格の問題に直結するためです。
在留資格変動申告の義務
ハイコリアに基づき、使用者は外国人労働者との労働契約終了時から15日以内に出入国・外国人庁へ申告しなければなりません。
この申告を怠ると使用者に過料が課され、今後の外国人採用時にも不利益が積み重なります。
解雇された外国人労働者の求職期間
E-7、E-9などの就労ビザ保持者は、労働契約終了後一定期間内に新たな勤務先を見つけられなければ在留資格が満了します。
この期間はビザの種類・在留状況により異なるため、各ケースの正確な基準は管轄の出入国事務所への確認が必要です。
使用者の立場では、外国人従業員の解雇がそのままビザ問題に連結することを認識し、労働法上のイシューと出入国上のイシューを同時に整理しておくことが安全です。
外資系法人の使用者向け事前点検チェックリスト
- 就業規則が雇用労働部に届け出られているか
- 懲戒委員会の構成・弁明機会付与に関する条項が明示されているか
- 普段から勤怠・業務指示・警告の記録が文書化されているか
- 解雇通知書が韓国語または韓国語併記で準備可能か
- 30日前の予告または予告手当の支給計画があるか
- 外国人従業員の場合、出入国申告手続が併せて検討されているか
- 本社HRポリシーと韓国法の衝突ポイントが事前に整理されているか
実務のヒント: 解雇を決定してから手続を合わせるのではなく、解雇の可能性が見え始めた段階から記録を残していくことが、不当解雇への防御の出発点です。
よくある質問
Q1. 本社の決定により韓国支店を撤退しなければなりません。従業員全員の解雇は可能ですか?
可能性はありますが、経営上解雇の4要件(緊迫した経営上の必要性、解雇回避の努力、公正な基準、50日前の協議)をすべて満たす必要があります。
本社の決定だけで「緊迫した経営上の必要性」が自動的に認められるわけではなく、韓国支店の財務・運営状況を別途立証しなければなりません。
Q2. 英文のTermination Letterのみを送付しましたが、効力はありますか?
労働者が内容を明確に理解できる状態であれば効力が認められる余地はありますが、労働委員会での争いを想定すると、韓国語併記の通知の方がはるかに安全です。
特に韓国国籍の従業員に対しては、韓国語通知が原則です。
Q3. 試用期間中の解雇は自由に行えますか?
試用期間中であっても、正当な理由のない解雇は不当解雇と判定される可能性があります。
ただし評価基準が事前に告知されており、客観的な評価が行われていた場合は、通常の解雇よりもやや広く認められる傾向にあります。
Q4. 解雇予告手当を支給したのに不当解雇と判定された場合はどうなりますか?
予告手当の支給と解雇の正当性は別個の問題です。
不当解雇と判定されれば、予告手当とは別に解雇期間分の賃金相当額を追加で支給する必要があります。
Q5. 外国人代表が直接、労働委員会の審問会議に出席する必要がありますか?
代理人(公認労務士・弁護士・行政士など、委任範囲内)による出席が可能ですが、事実関係の陳述が必要な場合は、代表または人事担当者の出席が求められることがあります。
言語の問題がある場合は、通訳の同席についても事前に整理しておく必要があります。
Q6. 勧奨退職として処理すれば不当解雇の問題は発生しませんか?
労働者が自発的に辞表を作成したのであれば解雇ではないため、不当解雇の争点は消滅します。
ただし、使用者が退職を強要した状況(録音、メッセージ、同僚の陳述)が明らかになれば、「実質的な解雇」と判断され、不当解雇として覆される可能性があります。
この部分の線引きが、最もよく争点となります。
専門家への相談が必要な方へ
外資系法人の解雇紛争は、一度労働委員会に持ち込まれると、本社・韓国支店・労働者のすべてに負担が累積していきます。
ビジョン行政士事務所は、外国人投資法人の人事・労務手続を長年にわたり扱ってきており、解雇の事前検討から労働委員会対応まで、実務段階ごとに助言いたします。
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