外国人1人法人の設立、可能性と実際の要件まとめ
外国人が韓国で1人で株主と代表取締役を兼ねる1人法人の設立は可能です。商法改正以降、株式会社・有限会社ともに発起人1人、取締役1人の構造で設立でき、外国人であるという理由だけで止まる段階はありません。ただし「設立可能か」と「実際に設立が機能するか」は別の問題です。資本金の規模、ビザとの連携、送金経路、登記所・税務署・銀行が要求する書類様式が一度に絡み合うためです。
実務では1人法人を2つに分けて見る必要があります。1つ目は、D-8投資ビザを狙う1人法人(資本金1億ウォン以上、外国人投資企業登録が必要)。2つ目は、ビザを伴わず単に法人だけを設立するケース(資本金制限なし、ただし外国為替申告と税務・銀行手続きはそのまま必要)。両者は資本金基準から送金フロー、事業所賃借のタイミングまですべて異なります。この違いを知らずに「1人だから簡単だろう」と始めると、たいてい銀行口座開設の段階で一度行き詰まります。
1. 外国人1人法人は法的に可能なのか
発起人1人、取締役1人構造の根拠
商法は株式会社の設立にあたり、発起人1人以上、取締役1人以上(資本金10億ウォン未満であれば取締役1人でも可)を要求しています。つまり、1人が発起人かつ株主であり、同時に取締役兼代表取締役になる構造に法的障害はありません。外国人という身分そのものを理由として発起人や取締役の資格を制限する条項も商法にはありません。
ポイントはここです。「外国人1人法人が可能か」は商法の問題ではなく、出入国・外国為替・税法・銀行実務の問題です。たいていはこの段階で引っかかります。
外国人という身分が影響する部分
法人設立そのものは可能でも、次の段階で外国人身分が変数として作用します。
- 外国為替取引法:資本金送金時に外国人投資申告または非居住者資本取引申告が必要
- 出入国:法人運営のため韓国に滞在する必要があれば、D-8などのビザ連携が必要
- 銀行:外国人代表名義の法人口座開設時に追加書類と本人来店を要求
- 税務:外国人株主への配当時に源泉徴収処理
法人は作れますが、作ってから運営できるかが本当の分かれ目です。
2. 1人株式会社 vs 1人有限会社、どちらが合うのか
2形態の実務上の違い
外国人が最も多く選ぶ形態は株式会社です。ただし1人法人という構造においては、有限会社のほうがシンプルなケースもあります。違いを一目で比較すると以下のとおりです。
| 区分 | 1人株式会社 | 1人有限会社 |
|---|---|---|
| 出資者の名称 | 株主 | 社員 |
| 最低取締役数 | 1人(資本金10億未満) | 1人 |
| 監査義務 | 資本金10億未満は免除可 | 義務ではない |
| 株式譲渡 | 自由(定款で制限可) | 社員の同意が必要(閉鎖性↑) |
| 外国人投資登録 | 可能(株式型) | 可能(持分型) |
| D-8ビザ連携 | 実務上もっとも一般的 | 可能だが事例は少ない |
| 外部投資の誘致 | 有利 | 不利 |
どんなケースで有限会社が合うのか
外部投資の誘致計画がなく、本社が100%の持分をそのまま維持しようとする外国企業の韓国子会社であれば、有限会社のほうがシンプルです。逆に韓国市場で事業を伸ばしながら、今後の新株発行、持分譲渡、従業員ストックオプションまで視野に入れているならば株式会社が合います。D-8ビザを狙う1人事業家はほぼ全員が株式会社を選びます。領事館の審査、外国人投資企業登録の手続きで事例が最も多く蓄積されているためです。
3. 資本金要件 — 1億ウォン vs それ以下
資本金基準は2つに分かれる
商法上、株式会社の最低資本金は別途定められていません。100ウォンの株式1株(つまり資本金100ウォン)の法人でも登記そのものは可能です。しかし、「外国人が韓国で事業を行う目的」の1人法人であれば、事実上次の2つの基準のいずれかに括られます。
| 類型 | 最低資本金 | 根拠 | 結果 |
|---|---|---|---|
| D-8投資ビザ連携の1人法人 | 1億ウォン以上 | 外国人投資促進法施行令 | 外国人投資企業登録 + D-8申請が可能 |
| ビザ無関係の一般1人法人 | 実務上100万~1,000万ウォン | 商法(最低資本金なし) | 法人設立は可能だがD-8資格は満たさない |
| 外国法人の韓国子会社 | 自由(投資登録時は1億ウォン) | 商法 + 外国人投資促進法 | 目的に応じて決定 |
資本金1億ウォンの意味
D-8ビザとの連携には、外国人本人が1億ウォン以上を本人名義で送金して外国人投資申告を済ませる必要があります。単に通帳に1億が「ある」だけでは不十分です。本国 → 韓国への外国人本人名義の外貨送金というフローが明確に記録されていなければなりません。韓国内での借入金、韓国居住者から借りたお金、すでに韓国に入っていたウォン資金は外国人投資として認められません。
4. ビザなしで1人法人を設立できるのか
海外居住の状態でも可能
外国人が韓国に滞在せず本国にいても、1人法人の設立は可能です。定款・発起人会議事録・就任承諾書などに本人署名を公証し、本国での公証を経たうえで、当該国の韓国領事館またはアポスティーユによる認証を受ければよいのです。
ただしこの経路には2つの大きな制約があります。
- 法人印鑑登録と登記申請は韓国内で処理されなければなりません。本人が来られない場合は委任状が必要です。
- 法人口座の開設は、ほぼすべての市中銀行が外国人代表取締役本人の韓国内での対面手続きを要求します。Eメール・郵送では進みません。
つまり、法人は遠方からでも作れますが、運営の開始には結局のところ韓国訪問が必要ということです。
ビザなしで作った法人の限界
D-8の資本金(1億ウォン)未満で1人法人を作ると、次のような状況が生じます。
- 法人登記は可能、事業者登録も可能
- 外国人投資企業登録は不可 → D-8ビザの申請資格なし
- 外国人本人が韓国に常駐して働くには別途のビザ(例:F系列、E-7など)が必要
- 結果的に「ペーパーカンパニー」に近い形態になりやすい
まず確認すべきは「この法人を作ったあと、本人が実際に韓国に入って働くのか」です。入って働くのであれば、資本金を1億ウォン以上に設定してこそD-8ラインが開きます。
5. 設立手続きの段階別フロー
1人法人設立の標準的な順序
| 段階 | 内容 | 所要 | 担当機関 |
|---|---|---|---|
| 1 | 商号検索および定款作成 | 1~2日 | 大法院インターネット登記所 |
| 2 | 外国人投資申告(該当時) | 1~3日 | 委託銀行/[KOTRA](https://www.kotra.or.kr) |
| 3 | 資本金送金 | 1~2日 | 本国→韓国市中銀行 |
| 4 | 資本金保管証明発行 | 当日 | 市中銀行 |
| 5 | 発起人会議・取締役会・就任承諾 | 1日 | 定款に従った手続き |
| 6 | 法人設立登記 | 3~5日 | 管轄登記所 |
| 7 | 法人印鑑登録・登記簿謄本発行 | 当日 | 管轄登記所 |
| 8 | 事業者登録 | 2~5日 | 管轄税務署 |
| 9 | 外国人投資企業登録(該当時) | 3~7日 | 委託銀行 |
| 10 | 法人口座開設 | 来店1回以上 | 市中銀行 |
| 11 | D-8ビザ申請(該当時) | 2~4週 | 出入国・在外公館 |
段階間で「途切れる」ポイント
表は滑らかに見えますが、3↔4段階、7↔8段階、9↔10段階でしばしば途切れます。資本金を送金して保管証明を受けたもののコードが誤って付されていたり、事業者登録の申請時に賃貸契約が外国人本人名義になっていなかったり、法人口座開設の段階で「1人代表が外国人」だという理由で本店審査が追加で入る、といった具合です。よく詰まる箇所なので、スケジュールに余裕を持たせる必要があります。

6. 必要書類と本国側の準備物
韓国で準備する書類
- 定款、発起人決議書、取締役・代表取締役就任承諾書、印鑑証明に代わる署名公証
- 本店所在地を証する賃貸借契約書(または使用承諾書)
- 資本金保管証明書(発起設立の場合)
- 外国人投資申告書の写し(該当時)
本国で準備する書類
外国人本人が本国にいる場合は、以下を本国の公証 → アポスティーユまたは韓国領事館の認証を経て韓国へ送る必要があります。
パスポートの写し(身分事項面)
居住証明書または住所証明書(英文)
本人署名公証書(Signature Certificate / Notary)
アポスティーユまたは領事確認(ハーグ条約国はアポスティーユ、非加盟国は領事確認)
本国の身分証または運転免許証の写し(銀行KYC用)
海外での職業・所得証明(資本金出所の説明用)
本国の銀行入出金履歴 6ヶ月~1年分(資金フローの説明用)
韓国内代理人への委任状(本人が来られない場合)
書類が多くても資金出所の説明が弱ければ、外国人投資登録の段階で補完要請が入ります。通帳にお金があってもフローの説明が不足していれば、すぐに行き詰まる可能性があります。
7. 1人代表が実務でぶつかる問題
自己取引・取締役会決議が1人だからこそ厳しく見られる
1人法人は、株主・取締役・代表取締役のすべてが同一人物です。この構造において、外国人代表が本人または本国の会社と取引(例:本社からの資金借入、本社への役務提供)を行うと、自己取引規定と移転価格規定が同時に作動します。
- 商法第398条 自己取引 → 取締役会の承認(1人法人では株主総会議事録で代替)
- 国際租税調整法 → 本社・海外関係会社との取引は正常価格検証の対象
書類上は1人なので速いものの、実際の審査では「この取引が合理的か」をより厳しく見ます。この説明が不十分だと、税務調査の段階で差が出ます。
1人代表が韓国にいない場合
1人法人の代表が本国にとどまり、韓国に従業員のみを置く形態も可能ではあります。ただし以下の点を事前に整理しておく必要があります。
- 韓国内の送達先住所(営業所・登記住所とは別の通知受領住所)の確保
- 税金計算書発行・電子税金計算書認証書発給用の本人認証手段
- 法人口座のインターネットバンキング用セキュリティカード/OTPの受領経路
代表が韓国にいないこと自体は合法ですが、韓国の行政システムは1人外国人代表の不在を前提に作られていないことが、実際の負担になります。
ビザと居住が絡むとき
D-8ビザで1人法人の代表になると、その法人は外国人投資企業の資格を継続的に維持しなければビザの延長ができません。つまり、資本金を任意に引き出したり、本人持分を外国人非投資者に譲渡したりすると、ビザ資格が揺らぎます。通過の可否より先に、法人運営とビザ資格が一体で結びついているという点を理解しておく必要があります。
8. よくある失敗
① 資本金1億ウォンを「合わせるだけ」でいいと考える
送金フローが**外国人本人→韓国法人口座(または資本金保管口座)**へきれいにつながっている必要があります。本国から韓国居住者へ送り、それを法人へ入れ直すような迂回送金は外国人投資として認められません。
② 定款に本人だけ記載し、議長・監査が空欄
商法上、1人会社であっても定款には議長の選出方法、株主総会代替の手続きを明示しておかなければ、紛争時の意思決定の効力が認められません。1人なので争う相手がいないという考えで定款を雑に作ると、将来の売却・投資誘致・相続の段階で揺らぎます。
③ 賃貸借契約を自宅住所で締結
家族の居住地や短期賃貸の住所を本店として設定すると、外国人投資企業登録時に「実体不明」として補完要請が入ります。通常、事務スペースとして認められる賃貸(共有オフィスを含む。ただし「非常駐」形態は制限的)を確保する必要があります。
④ 事業者登録の業種を狭く設定しすぎる
1人法人は事業初期に業種を狭く設定し、実際の売上が別の業種から発生して業種追加申告を忘れるケースが多く見られます。業種は最初から今後1~2年の計画を反映して登録する必要があります。
⑤ 「ビザなしで一旦作って」韓国滞在で運営
ビザなしで作った1人法人を、短期ビザ(B-2/C-3)の状態で本人が韓国で直接運営すると、滞在資格外活動に該当する可能性があります。事業運営のための滞在には、D-8など別途の資格が必要です。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 外国人1人株主であると同時に、1人取締役・代表取締役を兼ねることは可能ですか?
可能です。資本金10億ウォン未満の株式会社は取締役1名で十分であり、発起人が1人でも設立が認められます。外国人という身分自体が取締役資格を妨げることはありません。ただし、法人印鑑登録と登記申請にあたっては、本人または委任を受けた代理人による韓国内での手続きが必要です。
Q2. 資本金1億ウォンに満たないと、D-8ビザは絶対に出ないのでしょうか?
原則として、外国人投資として認められる最低金額が1億ウォンであり、これに満たないと外国人投資企業として登録されないため、D-8申請の資格が生じません。1億ウォンを分割出資(例:本人5,000万ウォン + 外国人パートナー5,000万ウォン)して外国人投資総額1億ウォンを満たす方式は可能ですが、1人法人の定義(株主1人)と衝突するため、その時点で1人法人ではなく2人法人の構造となります。
Q3. 1人法人だから監査を置かないことも可能ですか?
資本金10億ウォン未満の株式会社は、監査の選任を免除することができます(商法第409条)。1人有限会社では、監査自体が義務ではありません。定款に監査免除の根拠条項を明確に置き、登記に反映する必要があります。
Q4. 本人が韓国に一度も来ずに1人法人を設立できますか?
法人設立までは可能です。本国の公証 + アポスティーユ + 委任状の組み合わせで、登記・事業者登録まで処理することができます。しかし、法人口座の開設とD-8ビザ申請は、外国人本人による韓国または本国領事館への訪問が必要です。結局、「設立は非対面、運営開始は対面」というのが現実的な流れです。
Q5. 1人法人に、後から外国人パートナーや韓国人パートナーを追加できますか?
可能です。新株発行または既存株式の譲渡により株主を追加できます。ただし、外国人投資企業の資格を維持しなければならない1人法人が韓国人に一部の持分を売却すると、外国人投資比率の変動として委託銀行に変更申告が入ります。外国人投資比率が一定水準以下に下がると、外国人投資企業の資格を喪失し、D-8ビザの資格も併せて揺らぎます。
10. ご相談のご案内
外国人1人法人は、「可能か/不可能か」よりも、資本金フロー・ビザ・登記・税務がどのように一本につながるかで結果が変わります。1億ウォン送金時のコード一つ、本店賃貸借契約書の名義の一行、定款の議長選出条項の一行が、次の段階の通過可否を左右します。
ビジョン行政士事務所は、外国人単独の1人法人設立から外国人投資企業登録、D-8ビザとの連携、事業者登録・法人口座開設までを一つの流れとして捉えて進めます。本国公証書類の様式の確認、送金コードの事前チェック、賃貸借契約書の名義整理、登記・税務署のスケジュール調整までまとめて対応いたします。
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