外国人が有限会社を設立する方法とメリット・デメリット実務ガイド
外国人が韓国で法人を設立する際、最初に判断が分かれるポイントは株式会社と有限会社のどちらを選ぶかです。結論から言うと、内部運営がシンプルで社員が家族や少数の投資家中心であれば、有限会社(有限責任会社ではなく、商法第3編第5章の有限会社)のほうが実務上はるかに扱いやすいです。株主総会・取締役会・監査役といった機関設置義務が軽く、財務諸表の公告義務もなく、持分移動も株式会社より簡素です。一方で、対外的な投資誘致・上場・証券発行を目指すなら有限会社は適しません。
外国人が有限会社を設立する手続き自体は、株式会社とほぼ同じです。法人名の確定 → 本国書類の公証・アポスティーユ → 外国人投資申告(FDI申告) → 資本金送金 → 登記 → 事業者登録 → 外国人投資企業登録 →(必要に応じて)D-8ビザへの変更という流れです。多くの場合に詰まるのは手続きそのものではなく、資金出所の説明、本国書類の形式、社員構成と持分比率です。一見、書類さえ揃えればよさそうに見えますが、実際の審査ではこの3点で差がつきます。
1. 有限会社とは何か、なぜ外国人に向いているのか
有限会社の実態 — 株式会社の縮小版ではない
韓国の商法において有限会社は、社員の出資によって構成され、社員は出資額の範囲内でのみ責任を負います。株式会社のように株式を発行せず、出資口数によって持分を分けます。形式は株式会社に似ていますが、実務運営ははるかに軽量です。機関構成、開示義務、持分移動の方法において根本的に異なります。
外国人が韓国で法人を設立する理由は通常3つです。第一に、韓国国内における事業基盤の確立。第二に、D-8ビザ(企業投資ビザ)への接続。第三に、本社の韓国支社を法人化すること。このうち少数株主・単独出資者・家族投資という構造であれば、有限会社は運営負担を大幅に軽減してくれます。
どのような外国人に有限会社が向いているか
- 本国親会社が100%出資する子会社を設立する場合
- 投資家が1〜3名で固定されており、当面は外部投資を受けない場合
- 韓国内で法人税・外国為替申告を透明に行うだけで十分な小規模な貿易・コンサルティング・サービス業
- 財務諸表の対外開示を避けたい場合
逆に、ベンチャー投資、VCラウンド、将来的なIPOを視野に入れているなら、有限会社から株式会社へ再度組織変更する負担が大きくなります。最初から株式会社を選んだほうが無難です。
2. 株式会社と有限会社、実務でまず押さえるべき違い
核心は「機関設置義務・開示義務・持分移転」
株式会社は機関(株主総会、取締役会、監査役)の負担が大きく、一定の要件を満たすと監査人指定と財務諸表開示義務が課されます。有限会社はこの負担がはるかに軽量です。一方で、資本調達・証券発行は株式会社にしかできません。まず検討すべきは、今後この法人が誰から資金を受け取るのかという点です。
| 区分 | 株式会社(株式會社) | 有限会社(有限會社) |
|---|---|---|
| 持分単位 | 株式 | 出資口数 |
| 最低資本金 | 法定下限なし(実務上100万ウォン以上) | 法定下限なし(実務上100万ウォン以上) |
| 機関構成 | 株主総会・取締役会・監査役(規模により監査委員会) | 社員総会・取締役(1名以上)、監査役は任意 |
| 持分移転 | 自由(定款で制限可能) | 社員総会の同意が原則(定款で変更可) |
| 証券発行 | 可能(株式・社債) | 原則として不可 |
| 外部監査・開示義務 | 一定規模以上は義務 | 2018年改正以降、一定規模以上は外部監査対象に編入(以前より強化) |
| IPO・上場 | 可能 | 不可(組織変更後に可能) |
| D-8ビザへの接続 | 可能 | 可能 |
従来と変わった点 — 「有限会社は開示しなくてよい」は昔の話
2018年の外部監査法改正により、有限会社も一定規模以上であれば外部監査の対象に編入されました。売上高・資産総額・社員数などの基準を超えると、株式会社と同様に監査を受ける必要があります。古いブログ記事を参考にして「有限会社は開示がない」と信じて設立し、数年後に監査対象になるケースは、たいていこの点でつまずきます。実際の審査でも、この説明が不十分だと事業計画そのものが雑に見えてしまいます。
判断基準
- 外部投資・IPOを目指す → 株式会社
- 小規模・少数株主・運営の簡素化 → 有限会社
- 本国100%出資の子会社 → 通常は有限会社が楽
- 将来変更の可能性あり → 最初から株式会社のほうが安全
3. 外国人の有限会社設立手続きを段階別に
全体像 — 7ステップ
表面上は書類手続きに見えますが、実際の流れは**お金の流れ(資本金送金)と書類の流れ(本国公証・韓国登記)**がかみ合っている必要があります。どちらか一方がずれると、外国人投資企業登録までもつれます。
| 段階 | 内容 | 想定期間 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 商号確定・事業目的・社員構成・役員決定 | 1〜3日 |
| 第2段階 | 本国書類の準備(印鑑証明・在職証明・パスポート公証など)・アポスティーユまたは領事認証 | 7〜21日 |
| 第3段階 | 外国為替銀行で外国人投資申告(FDI申告) | 1〜3日 |
| 第4段階 | 資本金送金(本人名義の海外口座 → 韓国の外国為替銀行の資本金口座) | 2〜5日 |
| 第5段階 | 定款作成・公証・法人登記申請(管轄登記所) | 5〜10日 |
| 第6段階 | 事業者登録(税務署)、法人印鑑届、法人口座開設 | 3〜7日 |
| 第7段階 | 外国人投資企業登録(KOTRA/委任銀行) | 3〜5日 |
実際に時間のかかる区間
現場で最も詰まりやすいのは、第2段階(本国書類)と第4段階(資本金送金)です。アポスティーユ条約未加盟国の場合は駐韓大使館・領事確認が必要になり、2〜3週間以上延びます。送金は本人名義の海外口座から本人名義の韓国資本金口座へ直接入金する必要があり、他人名義や経由送金はすぐに引っかかります。
4. 必要書類と本国での公証・アポスティーユ
外国人(社員)が準備する書類
社員が個人か法人かによって書類が異なります。まず確認すべきは身分証明と住所証明です。
| 区分 | 個人社員 | 法人社員(親会社出資) |
|---|---|---|
| 身分 | パスポート写し(公証) | 本国法人登記簿謄本 + 代表者パスポート写し |
| 住所 | 居住証明書または住所証明 | 本社所在地証明 |
| 印鑑・署名 | 署名公証(本国の公証人)または印鑑証明 | 取締役会決議書・委任状・署名鑑 |
| 公証方式 | アポスティーユまたは駐韓大使館の領事認証 | 同じ |
| 翻訳 | 韓国語訳文を添付(翻訳者確認) | 韓国語訳文を添付 |
韓国側で準備する書類
- 定款(有限会社用 — 株式会社の定款と条項構成が異なる)
- 社員名簿・出資口数内訳
- 取締役の就任承諾書・印鑑届
- 本店所在地の賃貸借契約書または所有証明
- 外国人投資申告受理証
- 資本金払込証明(保管証明書)
- 商号検索完了(登記所での商号検索)
- 事業目的の具体的な文言を確定(許認可業種の場合は業種コードを再確認)
- 社員(出資者)構成・出資口数・持分比率の確定
- 取締役を最低1名指定(外国人も可。韓国居住の取締役がいると実務上便利)
- 本国書類のアポスティーユまたは領事認証を完了
- 本国書類の韓国語訳を添付
- 外国人投資申告受理証の受領
- 資本金送金完了・保管証明書の受領
- 本店の賃貸借契約または所有関連書類を準備(家主の同意が必要な建物を確認)
- 定款の公証完了
- 法人登記完了後、登記簿謄本を発行
- 事業者登録・外投企業登録を続けて進行
公証・アポスティーユで見落としやすいポイント
よく見落とされるのが、本国の公証人の署名に対するアポスティーユ確認です。書類本文のみ公証を受け、公証人の署名そのものにアポスティーユを取らない場合、韓国の登記所で差し戻されます。韓国はアポスティーユ条約加盟国なので、加盟国の書類はアポスティーユ1回で完結しますが、非加盟国(中国・ベトナム・台湾など)では自国の公証 → 外務省認証 → 駐韓大使館の領事認証まで3段階を踏む必要があります。
5. 資本金と外国人投資申告(FDI)の実務
外国人投資促進法の基準 — 最低1億ウォン
一般の法人設立には資本金の最低額はありませんが、外国人投資促進法上の「外国人投資」として認められるには、1件あたり1億ウォン以上でなければなりません。1億ウォン未満の場合、外国人が出資しても「外国人投資」ではなく、単なる外国為替取引として処理されます。この違いが実務上、最大の分かれ道になります。
| 資本金の区分 | 外国人投資認定 | D-8ビザ接続 | 外投企業優遇 |
|---|---|---|---|
| 1億ウォン未満 | 不認定 | 不可 | 該当なし |
| 1億ウォン以上〜3億ウォン未満 | 認定(1人あたり1億ウォン以上) | 可能(ただし審査は厳格化) | 一部適用 |
| 3億ウォン以上 | 認定 | 可能(審査負担は緩和) | 適用 |
実際の核心は資金出所の説明
書類以上に重要なのが、資本金の出所の説明です。口座に資金があっても、その流れの説明が弱ければ、すぐにもつれることがあります。直近数年間の給与・事業所得・売却代金・贈与など、資金の出どころを裏付ける証憑が必要で、本国の税務申告内容と食い違うと審査が止まります。実際の審査では金額よりも資金フローの合理性で差がつきます。
外国人投資申告(FDI)の手続き
申告は指定外国為替銀行またはKOTRAを通じて受付します。申告書には投資家情報、被投資企業情報、投資金額、業種、取得出資口数が記載されます。申告の受理は早ければ当日ですが、制限業種(放送・通信・原子力など)の場合は産業通商資源部の審査が加わり、期間が長くなります。
6. 有限会社のメリット — 実際に何が楽なのか
運営負担が軽い
株式会社では毎年、定時株主総会、取締役会決議、議事録保管、事業報告書など、文書手続きがタイトです。有限会社は社員総会を開くだけでよく、取締役会は強制されません。社員1名・取締役1名が同一人物という構造も可能です。本国が100%出資する子会社であれば、韓国の取締役1名が決裁するだけのシンプルな構造が実現できます。
持分管理がシンプル
株式会社では株式発行・株券管理・名義書換など、持分管理が煩雑です。有限会社は出資口数の記録だけを管理すればよく、持分移動も社員総会の同意で処理されるため、家族やパートナー間での持分調整がすっきりします。
開示義務から比較的自由
2018年の改正で大規模な有限会社は外部監査の対象となりましたが、中小規模は依然として開示義務から自由です。競合他社への財務情報の露出を避けたい外資系親会社が韓国子会社を有限会社にする理由は、ここにあります。
税法上の違いはほとんどない
よく誤解されるのが「有限会社は税制優遇が異なる」という話ですが、法人税法上、株式会社と有限会社は同一です。法人税率、源泉徴収、付加価値税申告まですべて同じです。有限会社だからといって税金が安くなることはありません。
7. 有限会社のデメリットと実務上の落とし穴
資金調達手段が狭い
株式会社は株式・社債で資金を調達できます。有限会社は出資口数の増加と銀行借入程度に限られます。VCやエンジェル投資家はほぼ有限会社には入りません。韓国のスタートアップ投資契約書(SAFE・CB・RCPS)は、いずれも株式会社を前提に設計されています。
組織変更の負担
後に株式会社へ変更する場合、社員総会の特別決議、債権者保護手続き、登記、定款の全面改訂が必要です。時間と費用は法人設立に匹敵します。最初から方向性が明確でないと、この費用を二重に支払うことになります。
2018年以降の外部監査リスク
資産・売上が一定規模を超えると、外部監査対象に編入されます。「有限会社は開示がなくて楽」と思って設立しても、数年後に売上が伸びればすぐに監査義務が発生します。成長スピードの速い業種では、特に弱点となるポイントです。
「社員(社員)」概念の落とし穴
有限会社における「社員」は、韓国語では従業員ではなく出資者を意味します。本国の契約書や取締役会決議書を翻訳する際に、「shareholder/member」を「従業員」と訳してくるケースがしばしばあります。このまま提出すると登記所で差し戻されます。一見些細な翻訳問題のようですが、実務では大きな遅延要因になります。
8. 設立後の事業者登録・外投企業登録・D-8ビザ
登記が終わったら完了、ではない
法人登記が完了すると登記簿謄本が発行され、これを用いて税務署で事業者登録を行います。その後、KOTRAまたは委任外国為替銀行で外国人投資企業登録を受けます。この段階で外投企業登録証が発行され、これがD-8ビザ申請の根拠書類となります。
| 後続手続き | 担当機関 | 必要書類 | 想定期間 |
|---|---|---|---|
| 事業者登録 | 管轄税務署 | 法人登記簿謄本、定款、賃貸借契約書、代表者パスポート | 1〜3日 |
| 外国人投資企業登録 | KOTRA / 外国為替銀行 | FDI申告受理証、資本金保管証明、登記簿謄本、事業者登録証 | 3〜5日 |
| D-8ビザ変更/発給 | 出入国・外国人庁 | 外投企業登録証、事業計画書、事務所の証憑、資本金の証憑、学歴・経歴 | 2〜4週間 |
| 法人口座開設 | 市中銀行 | 登記簿謄本、事業者登録証、代表者パスポート、印鑑 | 1〜3日 |
D-8ビザ接続で差がつくポイント
有限会社であってもD-8ビザ自体の条件は株式会社と同じです。外国人投資1億ウォン以上、実在する事務スペース、事業の実在性。実際の審査では書類よりも事業の実在性で差がつきます。シェアオフィスの住所だけを借りて実際の運営実績がない場合、だいたいここで引っかかります。
9. よくあるミス
ミス1 — 有限会社と有限責任会社を混同する
定款テンプレートを有限責任会社用で取得して使うと、登記が差し戻されます。条項構成が異なります。
ミス2 — 資本金を外国人投資申告の前に送金してしまう
申告後に送金するのが原則です。順序を間違えると「外国人投資」として認められません。
ミス3 — 本国書類のアポスティーユを公証本文にのみ取得する
公証人の署名自体にアポスティーユが必要です。現場で最も頻繁に見る差し戻し理由です。
ミス4 — 取締役を海外のみに置く
法的には可能ですが、実際の税務・口座・官公署対応は韓国居住の取締役がいないとスムーズに進みません。韓国で連絡が取れる取締役が0名だと、法人口座開設の段階から止まります。
ミス5 — 事務所住所を自宅にする
D-8ビザ審査では、自宅住所の法人は「事業実在性」が弱く評価されます。特に家主の同意がない、または建築物の用途が住居専用である場合、事業者登録自体が難しいケースがあります。
ミス6 — 事業目的を広く書きすぎる
定款の目的に「その他前各号に関連する一切の事業」とだけ書いて、実際の許認可業種を記載しないと、その業種は営業できません。実際に運営する業種を具体的な文言で先に入れておく必要があります。
ミス7 — 法人設立後、外投企業登録を後回しにする
登記後に外投登録が遅れると、D-8ビザ審査では実績の空白として映ります。可能な限り同じ週内に続けて処理するのが望ましいです。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. 外国人1人で有限会社を1人設立することは可能ですか?
可能です。社員1名、取締役1名(同一人可)の構造で設立できます。ただし、外国人投資として認められるには1億ウォン以上の出資が必要で、D-8ビザ接続もこの条件に合わせる必要があります。1億ウォン未満の場合は法人は作れても、外投登録とD-8は不可能です。
Q2. 株式会社に変更するにはどうすればよいですか?
商法上の組織変更手続きで処理します。社員総会の特別決議、債権者異議催告(1か月以上)、株主名簿の整備、変更登記までおよそ6〜10週間かかります。実務上、最初から株式会社で進めるほうが組織変更コストより安く済むケースが多いです。
Q3. 代表取締役が海外に居住していても構いませんか?
法的には海外居住の取締役も可能です。ただし、韓国での口座開設、税務署訪問、官公署書類の受領など、実務上、韓国居住の取締役が0名だと業務が止まります。実務では共同代表として韓国居住の取締役を1名置く構造が一般的です。
Q4. 有限会社も毎年税務申告が必要ですか?
はい。法人税は事業年度終了後3か月以内に申告、付加価値税は四半期または半期ごとに申告します。源泉税、地方税、四大社会保険まで株式会社と完全に同じです。「有限会社だから税務が簡単」というのは誤解です。
Q5. 本国親会社が100%出資する場合、代表取締役も親会社が決めるのですか?
代表取締役は自然人のみ可能です。親会社が取締役として指定されても、実際に業務を行う自然人を別途代表取締役として登記する必要があります。通常は親会社の取締役会決議で代表取締役を指名し、委任状・アポスティーユ・韓国語訳文を登記書類に添付します。
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